滅失登記と資産税課

登記

建物を解体し取り壊した時に申請する滅失登記。解体工事が完了した後に登記の相談をされる方が多いものです。そこに存在していた建物の所有者が、「建物を取り壊したので滅失登記をしてください」と来られるのだから、簡単な登記のように思われます。

建物の特定が難しい解体後の滅失登記

建物の登記記録の特定

取り壊された建物の登記記録は、建物がなくなったことで存在しないものを記録しておく意味がなくなり閉鎖することになります。そのために、閉鎖する建物の登記記録を特定する必要があります。

一つ一つの建物ごとに付された家屋番号とその建物が建っていた土地の場所の地番(所在)、そして所有者の記録から建物の登記記録を特定します。

現場確認

建物の登記記録が特定出来たら、その登記記録を閉鎖するために建物の滅失登記を申請します。一度閉鎖した登記記録は、間違いだったとしても元に戻すことができません。そのため、まだ存在する建物の登記記録を誤って閉鎖してしまうことのないように、取り壊されて存在しなくなった建物の登記記録の特定には慎重になります。

所有者や登記申請の依頼者の説明から、取り壊された建物が建っていた場所に行き、調査士自らの目でその場所に建物が存在していないことを確認し、その建物が建っていた土地の地番を調べて、その地番と建物の登記記録の所在が一致していることを確認します。

依頼者の説明通り、建物の登記記録と現地の所在地番が一致し、所有権者の確認と抵当権の設定登記など第三者の登記記録がないことが確認出来たら、さらに解体工事をした工事会社からの証明書を添付して滅失登記の申請をすることになります。

建物の登記記録の特定ができない

建物の登記記録は、建物が新築されたときに表題登記を申請することにより出来上がります。

新築時に建物の敷地となっている土地の地番が所在欄に記され、重複しないように家屋番号が決められていきます。古くは、一筆の土地が広く大きかったために、同一所在(土地の地番)の敷地に複数の建物が建てられ複数の異なる家屋番号が付されてきました。

存在しない登記記録

建物の登記を特定するためには、建物の敷地となっていた土地の地番を調べて、その土地(地番)に在る建物の記録を照会して確認していく方法が一般的です。

ここで問題になってくることがあります。土地は分筆登記や合筆登記を経て、地番が変わることが多く、建物の登記記録に記されている所在地番の土地の登記記録が閉鎖されて存在しなくなっていくことがあります。建物の登記記録に記されている所在の土地の登記記録がなくなってしまうとその建物が建っていた場所が分からなくなってしまうことがあります。

例えば、隣接する3筆の土地があったとします。

  1. 建物新築時は、所在101番地・家屋番号101番で表題登記。
  2. 土地の地番100、101、102を合筆。所在100番の土地に家屋番号101番の建物。と変わる。
  3. 土地の地番100を2筆に分筆すると、所在100-1、100-2の土地に家屋番号101番の建物。となる

土地の地番100-1と100-2を敷地に持つ建物の登記記録はない。

土地の地番100、101、102の登記記録も閉鎖されている。

家屋番号101、所在101の建物登記があるだけでは、登記記録と現在の所在地番が異なるため取り壊した建物が家屋番号101、所在101の建物と同一だという証明にはならないとされています。

区分所有法施工(1962年)前の長屋

現在は、区分建物として1棟の建物の登記があるから、新築時の建物の所在地番が明記されている。

昭和37年以前に建築された長屋(区分建物)は、1棟の建物の登記がなくそれぞれ一つの建物として登記されていた。そのため、建物登記記録と実際に現存する建物が同一だと特定することが難しい。

法務局での調査

滅失登記の申請対象の建物の登記記録は、所在地番10番、家屋番号23番となっています。現状は、所在地番11番と12番にまたがってましたとなると、なぜ所在地番が10番になっているのか?それを書類で証明するとなると、時の経過とともに登記記録は変更されているし、相続や所有者の変更など調査量が膨大になってしまいます。

まともに調査すると旧公図の調査から始まって、隣接土地の登記記録を遡って調査してと、登記記録の調査費用だけでも数万円の印紙代が必要になってしまいます。この費用を申請人が当然に負担しなければ登記ができないのか?そこまでして、建物の滅失登記を申請して建物の登記を閉鎖しなければならないのか?

この例で行くと、所在地番10番は分筆登記によって10-1と10-2に変わっていて、所在地番10番になる建物は今後一切ありません。そして、実際の建物は取り壊し済みで存在していません。さらには、建物の登記記録が物件を特定できないのであれば、何の害にもならないのではないかと考えられます。だからといって、滅失登記を申請しなくてよいと言っているのではありません。

想像力

所在地番10の登記が存在しないのならば、家屋番号23の前後の家屋番号の建物の登記記録が残っているかもしれません。もし残っていたら、同じ理由で建物の特定ができなかったのかもしれません。このように想像力をフルに活用して調査をすると、長屋として建築されたのかもしれない。隣地や近所に昔のことをよく覚えているい人がいるかもしれない。あたりを付けて聞き込みに行ってみたら事実関係を証明するものが見つかるかもしれません。

申請人本人よりもご近所の方がよく知っていることがあったりします。

固定資産税の徴収

固定資産税の徴収をする資産税課の情報も有力です。法務局のように申請された情報を精査して記録する受けの態勢ではなく、税金の徴収漏れをなくすために積極的に調査しています。建物の新築、増築、滅失に至るまで現地に確認に行くなど、随時新しい情報に更新しているようで、法務局よりも正確な情報を持っていることがあります。

土地の所在地番、建物の増改築を含め不動産の所有者に課される固定資産税の納税通知書は情報の宝庫だと思います。

納税通知書の内容を問い合わせてみることで有益な情報を得られることが度々あります。

昭和37年より以前に建てられた建物で、所在地番の特定が難しい建物の滅失登記をする際には納税通知書の確認がお勧めです。

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