土地賃貸借契約の更新時期が過ぎているのに何もしないで放置されている賃借権。貸主(地主)・借主(建物所有者)ともに忘れているわけではなく、知っているのに言い出せないだけの場合も多いのではないかと思います。なぜこんなことが起きるのでしょうか?
既存の契約書が雑過ぎる
以前からよく使われている市販の契約書です。書かれている内容は、
- 賃貸人(地主)と賃借人(テナント)
- 賃貸する土地の所在と面積
- 賃料と支払方法
- 内容を変更するときには事前に承諾を得るということ
- 解除条件 概ね以上のことが詳細無しに記されているだけのものです。
旧法の借地契約期間は、一般的に20年間です。20年間もあれば、貸主・借主の状況も大きく変わります。契約当事者の家族構成や相続、生活状況や収入の変化、建物の老朽化などです。このような変化があった場合の具体的な対処方法が決められていないことがトラブルになる大きな原因のひとつです。
賃貸人の尻込みと賃借人の懐事情
昨今の少子高齢化と身寄りのない老齢人口の増加もあって、更新契約の諸条件を決めることが難しくなってきました。
賃貸人が、賃借人に更新契約を促した時、賃借人が高齢の単身者になってしまっていた場合、連帯保証人だけでなく有事のときの連絡先さえ定めることが出来ないこともあります。お金のことは重要な事項ですが、それよりも心配なことは、賃借人に何かあった場合の対処の方法です。
- 賃借人が一人で生活が出来なくなり、施設に移ることになった場合
- 収入が激減して滞納しがちになってしまった場合
- 家の中で倒れてしまったときに発見が遅れる心配
更新時には最低でもこれらのことは想定して契約書を作成しなくてはなりません。日頃から挨拶をしたり交流のある関係性が築けているのでしたら、少しは安心できるのですが、先代先々代からの賃借人でお会いしたこともないような関係だとしたら賃借人の事情も分からないため、更新の相談を躊躇してしまう気持ちも理解できます。
賃借人にとってはもっと深刻かもしれません。更新するには更新料が必要になることは理解していますので、まとまったお金が用意できない、あるいは、払ってしまったら生活が出来なくなることも考えられます。さらには、賃料の値上げも覚悟しなくてはなりません。それを考えると、自ら更新の話をすることはとても恐ろしいことで、可能なら現状のまま住み続けたいと思っても不思議なことではありません。更新できなければ引っ越すことも考えなければなりません。引っ越しにはまとまったお金が必要になります。そんな出費は避けたいものです。
土地の賃貸借は慈善事業ではない
20年。様々なことが起きるほどとても長い時間です。この長い20年毎に1回だけ、更新契約のために関わるという希薄な関係性が問題なんだと思います。少なくとも盆暮れの挨拶はするなど、お互いの関係性を良好に保つ努力はした方がよろしいかと思います。
それだけのことで20年毎の更新契約が締結しやすくなることは間違いありません。お金が安くなると言っているわけではありません。関係性を保つことで20年後を計画的に迎えることが出来るようになります。最後に、更新契約書の中に盛り込んでほしい重要なことを記しておきます。
更新契約書で決めておきたい特約事項
- 保証金・権利金等の有無および取り扱い
- 更新料、各種(増改築、建替え、名義変更など)承諾料の金額もしくは計算方法
- 転売・転貸借の可否
- 契約の解除の条件
- 解約時の賃借(借地)権の取り扱い(可能なら価格も)
- 底地の権利の取り扱い(可能なら価格も)
以上
賃貸人と賃借人が直接話し合いで決めることが難しいようでしたら、不動産会社へ依頼されることもご検討ください。但し、賃貸人と賃借人の関係が良好とはいえない、あるいは、更新拒絶や立ち退き等の可能性がある場合には、弁護士へ相談することになります。
※日常のコミュニケーションが一番大切なことは間違いありません。
コメント