土地を購入した時には2mありました。それが不動産会社の人に5ミリ足りないと言われました。たった5ミリのことで何でこんなに大騒ぎしているのか不思議でした。
昔土地を購入したのは父で、アパートを建てて家賃を得ることが目的でした。不動産屋に物件も工務店も紹介してもらい、きちんと設計して役所の許可も取って建築してもらったので何の問題もないと思っています。ところが昨年父が亡くなり、アパートのことはすべて父が一人でやりくりしていたので、残された母と子供達では管理することもできずわからないことだらけで、大きなお荷物のようなものになってしまいました。
幸い今は不動産の価格も高いようで、母と相談した結果、売却しようということになりました。早速大手不動産会社へ相談したところ、既存不適格建物とか何とか言われ二束三文の安い価格でしか売れない!と言われてしまいました。何が原因なのか理解できないまま不動産屋の言いなりになるもの嫌だったので少し考えさせてくださいと一旦売却の話は保留にしてもらったつもりでした。
それなのに1週間も経たないうちにまた不動産屋が工務店の人を連れて来たのです。いつ測ったのか分からないうちの土地と道路の接道の長さ、隣地との境界が書かれた図面迄作って持ってきて説明するのです。
だから安くしか売れません!と
要は違法だから相場で売却できない!ということらしいのですが、もう売るとも言ってないし、父が買った大切な不動産を違法だと決めつけて安く売らせようとする不動産屋にも不信感しか持てなくなっていました。こんなことって、よくあることなんでしょうか?
おかしいと思ったらきっぱりと断る勇気を持ってください
皆さんならどうされますか?不動産に関する法律は多岐に渡り、かつ複雑です。素人が簡単にわかるものでもありません。だから国家資格に合格する必要があり、高額な報酬規程が定められているのだと思います。
この大手不動産会社の営業マンの言っていることは正しいことかもしれません。しかし、残念ながら私も信用することが出来ません。きちんと調査するための時間が必要です。そのためにも一旦きっぱりとお断りしてください。「今は売却しませんのでお引き取りください。」
もしかしたら、契約しているのだから…とか、もうここまで動いているので、、、とか、いろいろと難癖をつけてくる営業マンがいるかもしれません。それでも一旦はお断りする勇気は持ってご対応下さい。
「しかるべきところに相談してますので!」とでも言っておけば問題ありません。大丈夫です。
信頼できる人か宅建指導班(宅建の免許権者へのクレームも聞いてくれます)に相談してみましょう。適切なひとに繋がる可能性は高いと思います。
徹底的に物件を調査する
何が問題か?分からない方も多いと思います。簡単に説明すると、『建物を建てることが出来る土地は、道路に2m以上接している土地。』ということなんです。道路との接面距離が1.999mでも建物を建築できないことが問題なんです。
では、何から調査していきましょうか?最低これだけは確認してほしい資料は下記の通り。調査自体が難しいと感じたら無理してご自身で調査するのではなく、土地家屋調査士に相談してください(ここでは測量士に相談することはやめてください)。
購入時の契約書類
土地のご購入後、合法にアパートを建築することが出来たのですから接道距離は2m以上あったと推測できます。昔は今ほど取引時に境界確認を徹底していたわけではありませんが、購入目的がアパートを建築できる土地探しだったことは当時の不動産仲介会社の担当者も知っていたことです。建築できない土地を紹介するとは考えられませんので、何かしら2m以上の接道があった証拠図面が残っていると思われます。良く探してみてください。重要事項説明書の添付書類に入っていることが多いです。
図面が出てきたらそれを一つの参考図面として、土地の境界確定測量を土地家屋調査士に依頼してください。徹底的に調査した後、現地の測量をして元の正しい境界点を復元してくれることでしょう。そこで立会確認した境界は正しく復元されたことになります。復元点で作成された測量図では、2m以上の接道があると思います。
法務局備え付けの地積測量図
法務局に備え付けられている土地の図面を地積測量図と言います。この図面は、土地家屋調査士が正式に調査・測量して、さらに隣地の土地所有者に境界の確認をしたうえで図面を作成して法務局に申請されたものです。申請された図面はすべて登記に反映されるわけではなく、誤りや矛盾しているおかしな点はないかなど法務局の方で厳しいチェックを受けます。その後、問題がない場合にのみ法務局に備え付けられることになり、誰でも閲覧できるようになります。
要は法務局のお墨付きをもらえるということです。
当該地の地積測量図があるかもしれませんので、法務局で必ず確認してください。もしあったとして、その地積測量図に描かれている土地が道路と2m以上接道しているようなら、その図面を復元すればよいわけです。※土地の境界は動かない!という原則があります。現在に至るまでの間に何かしらのミスや間違いがあって2mないことになっているだけの可能性が高いです。その原因を究明していけばいいだけのことです。
過去に行った測量図
境界確定をした土地が全て法務局に地積測量図も備え付けられているわけではありません。測量とは別に登記費用が掛かります。この登記費用を節約するために確定測量だけで終わらせてしまう方も少なくありません。ですが、たとえ登記申請までしていないとしても決して安いとは言えない費用をかけて測量したのですからその成果品(測量図や隣地との立会証明書・境界確認書など)は重要書類として大切に保管されているものと思われます。不動産の権利証と一緒に金庫などに保管されていることが良くあります。上記の地積測量図と同様に2mの接道を証明できる可能性が高い資料です。良く探してください。
資産税課の調査図
不動産を所有していると固定資産税(と場所によっては加えて都市計画税)を納めなければなりません。税額は、大きさや利用状況、資産価値などによって決められます。例えば、道路や公園などの公共の用に供していれば免税されます(申告義務はあります)。役所が勝手に税金を免除してくれるわけではありません。届け出ればいいだけですので、申告していない心当たりがある方はすぐに問い合わせてみた方がよろしいかと思います。
不動産登記があるとこちらに通知がされます。課税の間違いや課税漏れが起きないようにするためです。登記と連動しているのは当然のことですが、登記申請をしない方も社会には大勢います。そのため課税する側として、航空写真を利用したり定期的に独自の調査も行っています。未登記の建物を発見したり土地の課税が始まったときなどは、職員が現地調査をして記録を残していることがあります。この記録は法務局に登記されているものとは異なりますので、調べて確認してみることが重要です。
土地家屋調査士が作成した境界確認書
上の過去に行った測量図とセットになっていることが多い書類です。土地家屋調査士は登記申請を前提に測量します。現況の測量だけでなくこの境界はいつ設置されたものなのか?法務局に地積測量図迄備え付けられている境界と一致しているのか?あるいは、所有権界ではないのか?本当に筆界はココで正しいのか?など、間違いが起きないように隣だけでなく場合によっては、その土地が存する1街区すべてを測って確認することもあります。
今回の問題となっている接道幅が2mに満たないのは、初めからなのか、周りの境界が確定(確認)されるうちにどこかで間違いが生じ、結果そのしわ寄せが集中してしまって2mに満たなくなってしまったのではないのか?等、様々なケースを考え、想像力を働かせて測量、そして境界確認の立会をするようにします。
2mの接道がない土地がどういうものなのかということは、不動産を扱う業界人であれば十二分に理解していることです。意図的に2m未満の接道しかない土地を作ることは考えづらいことなのです。境界標を設置するのも人が行うことです。境界標の設置時に1ミリ2ミリのズレが生じてしまっただけのことかもしれません。そうしたズレをや誤差を見つけて正すことが出来るのも、過去の資料や図面が残っているからです。
まとめ
故意に接道部が2m未満の土地を作ることは、常識では考えられないことです。時間の経過とともに境界付近の塀などを作り替えたり、工事のたびに境界標が少しづつズレてしまったのかもしれません。
現状を測って2mありませんと決めてかかるのではなく、その土地を含め隣接地の過去を調査することで正しく復元することが可能になります。不足分が数ミリから数センチメートル程度でしたら徹底的に調査してみてください。
ただし、10センチメートル足りないとかいう場合は誤差とは考えにくく何かしらの理由があって、初めから2mの接道がなかった可能性の方が高いと思います。
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