解体工事で取り返しのつかない失敗をしないように

登記

家を建て替えるときに当然必要になる既存の建物の解体工事。工事自体は工事会社に任せてしまうのでご所有者がやるべきことはご近隣へのご挨拶くらいしかやることはないのですが、解体工事により建物がなくなったことで問題になることもあります。目には見えない権利に関係することなので注意が必要です。

建物が解体されることで起こる二大問題

担保物件の消滅

住宅の購入、建物の建築やリフォームのときには銀行などの融資を利用することが一般的です。そして、融資をする銀行はお金を貸す条件として土地・建物を担保に取ります。担保として提供された不動産の登記簿に抵当権(根抵当権)の登記がされることになります。

抵当権(根抵当権)の登記の意味は、「この不動産はお金を貸した担保物件です。全額返済されるまでは私に処分する権利があります。」と公にすることです。さらに、契約通りに返済されないで何度も契約違反が繰り返し起こったときには、抵当権(根抵当権)を設定登記した債権者が、裁判所の競売の手続きで不動産を売却して代金回収できる制度となっています。登記簿に抵当権(根抵当権)がある不動産を購入する人がいないのは、例え所有権移転の登記をして登記簿上の所有者となっても、その前に登記された抵当権(根抵当権)の債権者が担保となっている不動産を競売で売却することが出来るからです。

お金を貸した銀行(債権者)の担保となっている建物を解体したら担保物件が消滅してしまうことになります。銀行(債権者)が、重大な契約違反をしたのだから借金を全額一括で返済してもらいます!と要求してくることも考えられます。

また、建物が取り壊されたら建物の滅失登記をしなければならないとされているのですが、抵当権(根抵当権)の登記が残っている建物をそのまま滅失登記を代理申請する土地家屋調査士はいません。たとえ本人申請したとしても法務局でストップがかかりますので、現実的には難しいと思います。

面倒な問題にならないために、解体工事の前には必ず建物の登記記録を確認するようにしましょう。もし、抵当権(根抵当権)の登記があるようでしたら、融資担当の銀行に連絡して内容を確認してください。そのうえで返済計画を考慮して資金繰りをするようにしてください。稀に抹消し忘れということもあります。その時には、再度、登記の抹消書類を作成してもらえるよう銀行にお願いしてください。

借地権の消滅

こちらはもっと複雑な問題になります。借地権の更新や建替が地主さんと合意に至る前に既存の建物を取り壊してしまうと借地権が消滅してしまいます。特に相続が関係してくると話が複雑になり易いです。

借地契約書などの重要書類が紛失してしまっていたりすることで、契約当時のことが全く分からず、話し合いが出来るようになるまでにもかなりの苦労が伴うケースが多々あります。借地権の場合には、建物を登記していないことも多く、建物が存在していることが唯一の権利の主張が出来る証拠だったりすることもあり得ます。納税通知書がきて納税し続けていることも重要な証拠になります。

取り返しのつかない行為

取り返しのつかない最たるものが権利の消滅です。建物の解体工事と滅失登記の組み合わせ。建物を一度取り壊してしまったら元通りに戻すことはできません。また、解体工事の完了によって建物の存在自体がなくなりますので、同時に担保物件も消滅し契約違反になる可能性があります。滅失登記が完了すると登記簿が閉鎖されてしまいます。一度閉鎖された登記簿は閉鎖登記簿として閲覧することはできますが、もとに戻すことはできません。

建物も存在がなくなれば借地の概念もなくなり、ゆえに借地権も消滅することになります。

一度口から出た言葉を取り消すことが出来ないのと同じように、一度消滅してしまったものは元に戻すことはできません。たかが滅失登記とは思わず、慎重に調査確認して事故の無いようにしていきたいものです。

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