自宅で亡くなった場合の告知義務
一人住まいの世帯は年齢を問わず増加している。孤独死というと高齢者を想像する人が多いと思うが、そんなこともなくなってきた。高校卒業と同時に親元を離れて都会での一人暮らし。遠方の大学に行くことになり始めた一人暮らし。結婚することなく独身を選んだシングル。配偶者との離婚、死別による単身生活者。一人暮らしも若者から高齢者まで幅広い年代に及ぶ。
人が自宅で亡くなった場合の告知義務のガイドラインが国土交通省によってつくられた。
心理的瑕疵は人それぞれ
ガイドラインが制定されたとはいえ、死に関する心理的負担の受け止め方は人それぞれである。夜お風呂に入ったら心臓発作で倒れてそのままお亡くなりになっても寒い冬にはよくあることと気にされない人がいれば、老衰による大往生のような朝起きてこなかったような自然死でも気になり同じ部屋では生活できないと感じる人もいる。
その心理的瑕疵にひとつの基準を設けたのである。
国土交通省では、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」での議論を踏まえ、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。
本ガイドラインにおいては、例えば以下の事項等について整理しており、詳細は別紙1(概要)及び別紙2(ガイドライン)をご確認ください。
・宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。
・取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい。
・賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。
・人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。<参考>
「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」ホームページ
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00015.html添付資料
報道発表資料(PDF形式)
(別紙1)ガイドラインの概要(PDF形式)
(別紙2)宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(PDF形式)
国土交通省 報道・広報(令和3年10月8日)より
これまでは、不動産仲介業者が伝える伝えないを判断していたようなものだが、それでは無理があった。
賃貸と売買で異なるガイドライン
不動産仲介業者にとっては、殺人や自殺は事故物件としての告知義務があるとしていたが、高齢者の孤独死は自然死であり事故物件ではないとして、告知しない不動産業者が多かった。
しかし、不動産の買主や借主にとっては、殺人も自殺も孤独死などの自然死も全て一括りに「死」として気にされる人は多い。
「知っていたら購入しなかった(借りなかった)!」
これが心理的瑕疵だが、賃貸と売買では、経済的損失の度合いが異なるとしてガイドラインは作られている。
賃貸3年、売買無期限
ガイドラインを読む限りでの私の見解です。
告知事項ではない(売買・賃貸)
- 自然死(老衰・病死など)
- 突然死(脳梗塞・心臓発作など)
※死亡してから発見までに時間を要した時には告知が必要になることが多い。
賃貸では告知事項ではないが、売買では告知事項になる
- 自殺・殺人などの事故で、事件発生から3年程度経過した物件
- 上記告知事項に当たらない自然死・突然死で発見が遅れ、腐敗腐臭の影響による特別なリフォームや清掃が必要だった物件で、事件発生から3年程度経過した物件
※隣地においても賃貸3年、売買無期限
自然死なら告知無用?!
売買においてガイドラインはあくまでも目安とした方が良いと思います。人の心を一律で判断できることはない。
例えば、事件後3年経過した物件の賃貸募集をしたところ、借りたいと言ってきたテナントが契約前に過去のことを質問してきました。もう5年も前のことだからと何もありませんと答えてしまいました。その後、無事契約して数カ月が経ちました。地域に溶け込んでいくうちに5年前の事件を知ってしまいました。このテナントは、『死』がとても気になる方で、我慢することができません。別の場所に移転することになりました。
商売を始めて、ようやく軌道になり始めたところです。もし契約前に知らされていれば、余計な費用負担と労力はかからなかった。。。
- 不動産業者の過失でしょうか?
- 貸主は質問に答えたのでしょうか?
- テナントが損害賠償請求を訴えてきたらどうなるのでしょう???
どんな結末を迎えても誰かが幸せになれません。。。
ガイドラインができたことで事故物件の問題は減少していくと思います。ガイドラインはあくまでもガイドラインです。人の心はみんな異なります。心理的瑕疵を定義することは永遠の課題かもしれません。目先の損得が大事な時もあります。
倫理観を一番大切にしてお取引を進めていきたいものです。
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