境界を立会確認し境界標を設置して登記する。それは平坦な土地でも擁壁のある傾斜地でもやることは変わりません。当たり前のように境界標を設置していたところに、突然『???』と疑問に思うことがあったので少し調べてみました。それは、一体物として造られたRC擁壁の所有権についてです。もしひび割れやクラックが酷くなり、修補の必要が発生した時に独自の判断で工事をしても良いのだろうか?また、その場合の費用は自分一人で負担しなければならないのだろうかということです。
許可を得て作られた合法の擁壁であること
擁壁のある土地は盛土にしろ切土にしろ造成工事が行われた証拠です。もとの地盤をいじって擁壁を造ったのですから擁壁の安全基準が気になるところです。
建築基準法の工作物としての許可であったり、開発行為や宅地造成工事の許可を取得したり、様々な擁壁が土留めのために造られています。擁壁の審査の基本は安全性の確保です。この安全基準を満たしているものと、そうでないものとでは生活するうえでの安心感が全く異なります。
とはいっても、素人に大丈夫かどうかを判断できるはずもありません。昨今、台風や豪雨、地震などの天災による土砂崩れの被害に遭われる事故が多くなってきました。全ての災害を天災といえるでしょうか?
無許可で作られた土留めが原因による土砂災害は人災です。人災は避けることが出来ます。一番確実な方法は、現地で実際の写真を撮り役所で確認することです。役所で確認して大丈夫ですと言われたら安心でしょうし、反対に無許可なうえに危険だと言われたら、不安でしかありません。擁壁のある傾斜地で事故が起きたら生死にかかわる問題です。どんなに安くて環境も気に入ったとしても、その物件を購入したり、関わったりすることはあきらめて別の物件を探すようにしましょう。
許可を得て築造が認められている安全な土留め
設計士や工事会社のように詳細まで知る必要はないと思います。一般的な見分け方だけ理解しておくだけで十分だと思います。気になることは役所へご相談ください。
間知ブロック
RC(鉄筋コンクリート)擁壁・L型擁壁
安全性に乏しく新しく作ることが認められない土留め
安全基準が厳しくなり、CB(コンクリートブロック)を土留めとして使用することはできなくなりました。大谷石はそれ自体が脆く劣化しやすく、ぼろぼろと崩れてきています。
CB(コンクリートブロック)
大谷石
擁壁の取り扱いについて擁壁に関わる土地所有者との合意がなされていること
擁壁は、区画毎に独立(区切られた)して造られることが基本です。稀に複数個の区画を一体の区切りの無い状態に造られている擁壁があります。境界標で権利関係を分けることはできますが、あくまでも机上の権利であり、現状は一つの擁壁であることに変わりなく、境界標を設置することで所有権の範囲を示しているだけのことです。
独自に単独で中抜きの工事が可能な間知ブロック
間知ブロックはその重量で土砂崩れを防いでいる擁壁です。横にも同じ傾きで積み上げられたブロックがないと崩壊してしまうものではなく、一部分を切り抜いてRC擁壁に作りかえることもできる土留めです。
独自に中抜きの工事が出来ないRC擁壁
RC擁壁は、間知ブロックのように斜めにすることなく垂直に造ることが出来るので、土地の一部が斜面にならないので、その区画を100%有効に利用できるようにする土留めです。前述したように1区画毎に区切られて造られていれば良いのですが、画像のように1体物で造られてしまうと途中を切り崩したりすることが出来なくなります。コンクリートの中が鉄筋で繋がっていることで強度が保たれているので、その鉄筋を切断してしまうと強度がなくなり崩壊しやすくなってしまいます。
とはいえ、合法に造られたRC擁壁は意図的に壊さない限り、簡単に崩壊することはないので勝手に手を加えない限り安心して良いと思います。
擁壁についての取り扱いを確認する
区画ごとに区切られて造られた擁壁、複数の土地を支えている一体物の擁壁、間知ブロックかRC擁壁などの違いに関わらず、その土地に土留めとしての擁壁がある場合には、その擁壁について詳しく調査・確認をするようにしてください。最低限確認したい項目は次の通りです。
- 擁壁築造時の許可と検査済の内容
- 既存の擁壁の安全性(CB,大谷石の場合は特に)
- 建物を建築する場合の制限
- 擁壁の所有者
- 境界の位置
- ひびや一部破損が生じたときの対処方法
- その他、決まり事の有無と内容
ご購入を検討されているなら不動産会社の担当者に聞いてみてください。多少面倒な調査になりますので嫌がられるかもしれませんが、めげずに頑張ってください。相続で取得されるときには、ご自身で調査することになりますが、隣接する第三者へ迷惑をかける可能性もありますので、役所で調査することくらいは行うようにしてください。どうしても不安なときには、建築士や不動産業者などの専門家にご相談ください。
コメント