日常生活では気が付かないことが多い地中の越境。境界線を明示する目的で造られた塀や柵、垣根などの囲障。地上の目に見える部分は境界線に沿って築造されています。隣地所有者と共同で境界線上に均等にまたがって築造されている塀や柵は、双方がその囲障は共有物でセンター積だということを認識していれば問題はありません。
ですが、一方の土地所有者の費用負担でセンター積で造られた囲障や地上では越境していないが地下の基礎部分が隣地に越境している囲障がある土地の売買取引が行われることになった場合には境界紛争になることがありますので注意が必要です。
一旦、境界紛争に発展してしまうと、容易に解決できなくなるリスクが高いので、お互いが落ち着いて誠実に協議することが最善の予防策になります。
越境が発覚するとき
既存建物の解体工事のときに判明することがほとんどだと考えられます。解体工事をする目的は大きく分けて2通りしかありません。建て替え、あるいは売却のため。
建物を撤去し、境界付近まで掘削することで地中の状態が分かるようになります。そして、解体工事を依頼された会社は、依頼者の所有する建物と地下埋設物を撤去することはできますが、隣地の基礎が越境していたとしても所有者の許可なく撤去することはできません。そこで、依頼者に伝えられて初めて事実確認が出来るようになります。
対処法
「相手方が勝手に人様の土地に越境してるのだから、相手の費用で越境解消の撤去をしてくれ!」
本音だと思います。そのままお伝えしても相手の気分を害して喧嘩になります。話し合いもできないままヒートアップしても、行きつく先は訴訟になるだけです。裁判で勝ったとして、相手は越境解消してくれるでしょうか?損害賠償が認められたとして、賠償金を払ってもらえるでしょうか?
何も得られない。それが現実だと思います。弁護士を雇って裁判をして勝ったとしても、多大な時間と費用を浪費して嫌な思いが残るだけでしょう。こんなバカな話はありませんが、それがこの国の現実です。すべての日本の制度や慣習を悪く言うつもりはありません。現実的に考えてほしいだけです。
なぜこうなった?!
きっかけは、解体工事です。それが、建て替えのため、売却するためなど、どんな理由にしてもこちらが行動したことがきっかけです。何もしなければ何も起こらなかったと思います。相手方に非がないとも言いませんが、目的達成のためには話し合いで解決してしまった方が得策です。そのために一方的にこちらが我慢しなければならないこともあるかと思います。感情的になることもあるかもしれません。理不尽なこともあります。いったん聞きいれて、じっくりと考えてみてください。どうしても絶対に譲歩できない、というところまではこちらが我慢することが一番早い解決策だと考えます。
譲歩案
訴訟まで行かず、感情的にならずにこちらが譲歩した結果は次のいずれかに落ち着くと考えられます。一人で交渉するのはとても難しいと思いますので、不動産仲介会社、ハウスメーカーや建築会社、測量会社の担当者にご相談のうえ協力してもらうようにしてください。
- 越境している部分を撤去させてもらう(基礎の一部を撤去しても囲障の安全が保たれる場合)
- 囲障を築造し直させてもらう
- 将来、再建築やリフォーム工事を行うときに越境を解消する工事を行ってもらう覚書を作成して、その時までは、現状のままとする
- 現状のまま、黙認する
上記1.2.の場合は依頼者の費用負担で行い、3.は相手方の費用負担とします。4.はこちらによほどの落ち度があるとき以外は考えられません。
まとめ
囲障の基礎部分の越境など日常生活だけでは判明することが珍しい問題が発覚したときには、事実を並べ立てて正論をいうことは控える。感情的になってしまうと話し合いの場がなくなり、訴訟にまで発展しかねない。そうなると、時間と費用の浪費なだけで、得るものは何もないと自覚してください。
友好的な話し合いが円満解決の一番の良策だと理解し、問題判明のきっかけを作った側が譲歩することで紛争を避けることが出来るということを忘れないようにして、不動産会社・ハウスメーカー・測量業者などと協力して相手方と交渉しましょう。
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