自宅の建て替えが開発行為?!

境界確定・測量
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地主さんと話していると度々話題に上がる『開発行為』。

  • 「あのアパートを建てるときに開発ですごく予定が狂ったんだよ」
  • 「営業さんのほとんどが開発を前提に話を持ってくるんだよね。誰が払うと思ってるんだろうね」
  • 「開発だけで1000万!」

「結局、開発の話を全くしなかったハウスメーカーのA社にお願いしたんだよ」

こんな話は日常茶飯事なんですが、なぜこんなに『開発』が問題になるんでしょうか?『開発』って何?を少し考えてみます。

開発行為とは?を検証してみる

都市計画法第29条の開発行為

(開発行為の許可)
第二十九条 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。

https://elaws.e-gov.go.jp/から引用

要は、建物を建てる時には、その敷地となる土地も住環境が良くなるように整備してください。ということなのでしょう。

そのために、開発許可が必要になる要件に該当すると、何ヶ月もかけて開発行為の基準を満たさなくてはならなくなります。決められた要綱に従って書類を作成して、その通りに現地の工事を完了させ、検査に合格しなければ建物が建てられません。どれだけの専門家と多くの人の労力が必要になるか容易に想像できます。どれ程の時間と費用を負担ことになるのか。

当事務所は神奈川県にありますので、神奈川県の基準を例に話を進めます。東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県、大阪、愛知、福岡などの都市圏のルールも似たり寄ったりです。

以下、平成28年12月の神奈川県の都市計画法第29条に基づく開発許可申請の手引きから要点を抜粋して解説します。

開発許可の一連の流れ

開発行為となると、自宅の建て替えでさえ上図フローの手続きと必要書類の作成が必要になります。詳細まで理解できなくてもオオゴトだということはわかると思います。

開発許可申請が不必要であれば、建物を建てるために建築確認の申請をすれば良いだけになります。それだけで、上図の手続きが全て不要になります。

開発行為とは?そして、開発許可の適用除外とは?

開発行為の定義を知り、適用除外に該当するようになれば、建築確認申請だけで建物を建築できることになります。

開発行為

開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で、土地の区画形質の変更を行うこと(都市計画法第4条第12項)。

区画形質の変更に該当しなければ、開発工事ではない。と言い換えることができます。

区画の変更

従来の敷地の境界の変更(道路や水路などを新設・拡幅・付替え・廃止すること)行うこと。

形の変更

土地に切土、盛土又は、一体の切盛の土工事(造成などで土地の形状を変える工事)を行うもので、次のいずれかに該当するもの。

  • 高さ2mを超える切土、又は高さ1mを超える盛土
  • 一体の切盛土で高さ2mを超えるもの
  • 市街化調整区域以外において、30cmを超える切土、盛土、又は一体の切盛土を行うものでその土地の面積が500m2以上

質の変更

農地・山林などの土地を、建築物を建築するための敷地(宅地)に変更すること。

開発行為の適用除外

上記開発行為を行う場合でも、一定の面積に満たない土地は、都市計画法第29条の開発許可を必要としません。

例えば神奈川県は、下記のような開発行為については許可を要しないことになっています。

  • 市街化区域内における開発区域の面積が 500 平方メートル未満の開発行為
  • 非線引都市計画区域内における開発区域の面積が 1,000 平方メートル未満の開発行為
  • 都市計画区域外における開発区域の面積が 10,000 平方メートル(1ヘクタール)未満の開発行為
  • 農業、林業、漁業の用に直接供するための開発行為等

それぞれの区域内において規定の面積以上であっても、次の場合は区画形質の変更に該当しない取り扱いとなっています。

区画の変更に該当しない行為

  • 分筆・合筆登記などの単なる登記の変更
  • 建築基準法の2項道路の道路後退(セットバック)による建物の敷地境界の変更
  • 単なる区画の分割や結合により敷地の境界が変更されても、公共施設(公園・緑地・広場・道路・下水道)の整備が必要ない場合

形の変更に該当しない行為

現状の敷地の地盤高を変更しないことが前提による以下の場合

  • 建築工事と一体と認められる土地の掘削工事や、基礎打ち工事
  • 2項道路のセットバックによる工事
  • 道路からのアプローチとしての局部的なスロープ・階段・駐車場の設置(高さ2m、幅6m以下)
  • 既存擁壁を同じ位置で造り替える工事

質の変更に該当しない行為

以下の土地は建築物を建築する敷地として取り扱われる。よって、質の変更による開発行為として取り扱われません。

  • 現に建築物が存する土地(仮設建築物及び違反建築物の敷地は除く)
  • 土地登記簿の地目が、5年以上前の受付で「宅地」で、現在も農地や山林として利用されていない土地
  • 固定資産課税台帳の現況地目が、5年以上前から「宅地」で、現在も農地や山林として利用されていない土地
  • 従前、建築物の敷地として利用されていた土地で、現在も農地や山林として利用されていない土地(5年以上前に建築物を除去した土地は除く)
  • 建築物の敷地又は特定工作物の用地として造成された土地(緑地、未利用地等は除く)で、次のいずれかに該当する土地
    • 都市計画法に基づく開発行為の許可を受け、工事の完了広告がなされた土地
    • 旧住宅地造成事業に関する法律によって認可を受け、工事の完了公告がなされた土地
    • 土地区画整理法に基づく認可を受け、換地処分の公告がなされた土地
    • 都市計画法第 29 条第1項第4号、第6号、第7号、第8号若しくは第9号又は都市の秩序ある整備を図るための都市計画法等の一部を改正する法律(平成 18 年法律第 46 号)第1条の規定による改正前の都市計画法第 29 条第1項第4号に該当する開発行為が終了した土地
    • 宅地造成等規制法に基づく許可を受け、工事完了の検査済証の交付がなされた土地
    • 建築基準法に基づく道路位置指定が行われた際道路と一体に造成された土地

思い込みで開発許可が必要だと決め付けない

東京・神奈川・千葉・埼玉、大阪・兵庫、愛知や福岡など都心部である程度広い土地に建物を建築しようとすると、都市計画法第29条の開発は避けては通れない問題です。

市街化調整区域で宅地造成や大規模開発などの計画は論外として、市街化区域内で建物を建築するのに何でもかんでも開発許可が必要になったら、お金持ちしか家も建てられないということになりかねません。

開発逃れを勧めているわけでもありませんが、代々受け継いできた土地の中で家を建て替えるだけで開発許可が必要だとしたら、国が強制的に無駄なお金の浪費を強いているとしか考えられなくなります。

開発許可申請が必要な場合と許可を要しない場合の線引きが記されています。同じ場所に同じ建物を建築する計画でも、申請方法の違いで、開発許可が必要になったり不要になったりしています。

開発行為に該当するかしないか、はじめに面積で判断します。よって、500m2だとしても許認可申請から造成工事までで少なく見積もっても1,000万円程の費用負担が生じることになります。

この金銭負担をなくすことができる可能性があります。

条文をよく読んで、開発許可が不要になるように建築計画を立てることはできませんか?!

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