不動産、主に土地建物を不動産会社へ売却するときは大きく2つのパターンに分けられます。ひとつは、現況有姿・契約不適合(瑕疵担保)免責の契約。他方は、境界確定・越境解消の条件が特約で付加される契約。
多くの不動産会社は、不動産を購入するとその土地に建物が在ってもその既存の建物を取り壊して、新しく建物を新築してから再販することが一般的です。
売主にしてみれば、どうせ既存の建物は取壊すのだから現況有姿・契約不適合(瑕疵担保)免責でいいじゃないかと考える方が多いのですが、買主にしてみたら解決するために費用の掛かるリスクは避けたい訳です。ここの部分の条件のすり合わせが売買価格に大きく影響してきます。一般の方が売主で、買主は不動産会社なので、素人対プロの交渉ごとになります。売買契約で、それはやり過ぎだろう!と思われる特約条件について考えてみます。
売主負担が当然だと思う条件
境界確定
お隣との境界線が未定のままでは、土地の形と広さが分からないので事業計画が立てられません。
そして、隣人としては隣地で工事などしてほしくはないものです。現状のまま静かに暮らしたい。境界線いっぱいいっぱいに高層マンションなんてとんでもないと思っています。そんなお隣さんに、「○○不動産と申します。このたび、こちらの土地を購入させていただきました。つきましては、境界確定にご協力ください。」といわれて、「はい。わかりました。」と快く応じてくれる人がいるでしょうか?
いままで隣人としてお付き合いのある売主さんが資産保全のために事前に境界確定測量をしておくか、ご相続のときにはその相続人の方が、「いままでお世話になりありがとうございました。相続財産の確定をしておきたいので、土地の境界確定測量にご協力をお願いいたします。」と境界を確定することは売主の義務だと思います。
越境に関する覚書の作成
売買に限らず、土地の境界測量をするときには、越境の有無を確認するために現況測量も一緒にご依頼されることをお勧めします。ご依頼者の土地の建物や工作物、庭木などが隣地に越境しているものを発見することが出来るからです。ご依頼者の越境物は、解体工事の際にすべて解消することが出来ます。
また、現況測量を一緒に依頼されるのでしたら、ご依頼時に隣接地からの越境物も確認してもらうように確定測量を依頼する土地家屋調査士にお伝えしてください。越境の有無は、境界が確定してからでないと確認することが出来ません。
境界確定測量を依頼した方の越境物を解消することは、先に述べた通りそれほど困難な問題ではありませんが、隣接地からの越境物の解消となると、そんなに簡単に解決できる問題ではなくなります。越境物としては、隣地との境に造られたブロック塀やフェンス、屋根の雨樋やカーポート、庭木の枝やエアコンの室外機などは目視でわかることもあります。分かり辛いものとしては、電話や電気などの空中にある引き込みケーブル、地中にある上下水道の引き込み管や集水桝などは不動産業者や土地家屋調査士などの経験者でないと調べ方すら分からないものもあります。こんなものまで、といわれるようなものとしては、境界を越えた部分のコンクリートの土間も越境物です。
越境物の有無・特定が出来たらお互いの紛争防止のために【越境物に関する覚書】や【越境解消の覚書】(タイトルは何でもいい)を書面で作成することが一般的です。覚書の内容は、①両者が越境物の特定と確認をした、②将来、越境物の所有者がリフォームや建て替えなどの工事をするとき、同時に越境の解消をする、③工事をするその時までは、現状のままであることを両者で承認する。この3点が盛り込まれていれば十分です。
ところが、売買契約の特約で、全ての越境物(売買対象地および隣接土地からの越境物)を売主の責任と費用で解消する。それが完了できないときには白紙解約できる。といったことが取引の条件の一つになっている契約を稀に見聞きします。
これは明らかに非常識でやり過ぎです。買ってやるんだから、これぐらいしろ!といった不動産業者の悪意すら感じてしまいます。
まとめ
売主が原因の越境解消は当然だと思いますが、隣地からの越境はその越境しているものは隣地の所有者のものです。他人様のものを退けさせることを費用負担もなしで売主に強要する。まだこんな不動産業者があるのかと驚きます。こんな条件を認めてしまったら、売主が苦労するだけでなく、幾らの費用負担が発生するのかわかったものではありません。場合によっては、売買契約自体が白紙にされ、越境解消のお金が無駄に捨てることになり、近隣関係も悪くなるという最悪の結果になることも予想されます。
買主選びと契約条件は十分に確認して、売主・買主双方WIN-WINとなる気持ちの良い取引が多くなることを願ってます。
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