不動産で詐欺に遭わないためには登記簿で所有者を確認することです
法務局はあまり馴染みがないところだと思います。
仕事に関係がある方を除くと、次のどちらかで知った方がほとんどだと思います。
- 『脱サラして会社を設立しようと考えたから』
- 『不動産のことを調べることになったから』
初めの方は法人登記、もう一つは不動産登記に関わることです。
法務局は、法人登記と不動産登記の情報(登記記録)を管理・保管している役所です。
会社として成り立つには、法人として登記することが必要です。こうして登記された法人(会社)の情報(法人の営業目的、役員の住所氏名、資本金の金額など)を保管していて、所定の手数料を払えば誰でも内容を調べることができます。
法人登記はここまでにして、不動産登記について書いていきたいと思います。
不動産登記は、不動産についての物理的な情報と権利に関する情報を取り扱っています。この全国の不動産についての情報を取り扱っている役所が法務局です。
この不動産の情報を不動産登記記録と呼び、ほぼ全ての情報がデジタル化されてコンピューター管理されています。この情報はオンラインで繋がり、一定の条件を満たすと、どこからでも個人のパソコンでも閲覧できるようになってきました。
不動産登記が必要な理由
現況の把握
今現在は共同住宅として使用されている建物が、登記記録では建築当初の使用形態のままで、グループホーム・事務所・共同住宅となっていたりすることがあります。このままで売買の決済をして、所有権の移転登記をしてしまうと不動産取得税の計算が割高になってしまうために、建物の表題部変更登記をしてからの決済になり、一月延びてしまったことで、ペナルティが課されてしまった取引。
購入した当時から工場として使用していたのに、一部の土地の登記記録が『田』のままで、売買の所有権移転が無効とされてしまった取引。農地法の手続きを経てから再度、所有権の移転登記を申請しなおしました。
売買対象の土地の面積は約100坪と紹介された土地の登記記録が100㎡と書いてあったので、現地に確認しに行ったら崖地だった。紹介されたときの資料の写真は、崖を横から撮ったもので、詐欺の被害者になる寸前でキャンセルできた取引。
など、現状と登記記録が一致していない詐欺まがいの話を耳にすることがあります。
現地と登記記録の双方を確認することで、トラブルを防ぐことができます。
昨今では、JREATや小口化商品といった不動産の証券化のように動産としての金融商品も増えてきました。不動産を証券化するときには、現況と登記記録が完全に一致していることが大前提になっていますので、広大な土地ほど登記記録の確認と境界確定測量や不動産登記が必要になることがよくあります。
また、金融機関が不動産を担保に融資をするときにも現況と登記記録に相違ないことが当然の前提条件になります。
権利の主張
登記記録を確認すれば、不動産の所有者がわかります。先祖の名前のまま登記手続きを怠っていただけなら、戸籍を調べれば現在の所有者候補は推測できますので、無関係の第三者からの詐欺被害に遭うことは避けることができます。
借地や借家などの貸し借りのことでも、後のトラブルを避けるために慎重を気して登記することもできます。登記の原則は、早い者勝ちです。専門用語を使うと分かり辛くなるのですが、
「登記には、対抗力はあるが公信力まではない」
と考えられています。簡単に言うと、
「早く登記された権利を優先するが、登記してあれば絶対ということではない!」
矛盾しているように思いますが、早い者勝ちが大原則だけれども、裁判で覆されることもあり得ます。ということです。不動産を担保にお金を貸すなら、必ずお金を渡すと同時に登記申請をしましょう!
どうなっても知りませんよ!と、助言されていると思ってください。
不動産調査に必須の4点情報
登記記録(登記事項全部証明書、要約書など)
物件概要と所有者、および権利関係を確認します。債務や負担も分かり、取引の安全性が推測できます。また、解決しなければならない諸条件もわかります。
公図(地図に準ずる図面)
物件の形状と位置、および隣接関係を確認します。
物件の特定のほか、道路に関することを確認します。現地と異なる箇所があるときには特に注意して調査するようにします。
土地所在図・地積測量図
土地の正確な形状と広さ、および位置と隣接状況が記された図面です。
物件の特定と隣接状態、主に道路に関することを確認します。図面と現地が異なる時は、越境があることが多いので注意が必要です。
建物図面・各界平面図
建物の正確な各階ごとの形状と広さ、および建物の敷地とその建物の位置が記された図面です。
どちらの図面にも各階内部の間仕切り線はありませんので間取りは分かりませんが建物全体のボリュームを把握することができます。課税目的に作成されているものだと思われます。
書類の入手方法
申請する際、土地・建物ともに住居表示(手紙や宅急便などを送るときに使う住所)とは異なる表記方法で記されています。
土地は『所在地番』、建物は『家屋番号』と呼ばれる表示の方法です。
毎年6月ごろに送られてくる固定資産税の納付書もこの表示方法が使われていますので、参考にすると便利です。
所有者やその親族などで、調査したい不動産の所在地番と家屋番号がわかるなら、近くの法務局へ行って、登記記録の写しを簡単に入手できます。
これから購入しようと思っているなど、所在地番と家屋番号がわからない場合には、その目的とする不動産を管轄している法務局へ行って窓口で聞くこともできます。
所在地番、家屋番号が不明の時の窓口で調べる方法
① 対象不動産の所在地を管轄する法務局をインターネットで調べる。
【法務局 〇〇市●●区】検索
② 住宅地図(道路地図など)を持って該当する法務局(支局、出張所など)へ行く。
③ 窓口で、調べたい場所を伝え、所在地番と建物番号の調べ方を聞く。
④ 法務局においてあるブルーマップなどを使って所在地番を調べる。
⑤ 申請書に記入して窓口に提出すると番号札が渡されます。記入方法も窓口で聞くと丁寧に教えてもらえます。
⑥ 番号が呼ばれたら、窓口に行くと申請書に貼付する収入印紙の金額を言われます。
⑦ 印紙売り場の窓口で印紙を購入して窓口に戻る。
⑧ 申請書に印紙を貼って、書類を受領します。
さいごに
売買、賃貸、取引の形態に関わらず登記記録は必ず確認します。登記記録と売主が異なる、抵当権の金額と販売価格に差があり過ぎる、などの一見、どうなってるの???と思う物件を検討しても時間と労力の無駄になることが多いからです。そして何よりも詐欺被害などのトラブル防止になるからです。
- はじめに登記記録を確認しておくとそのあとの質問や交渉がしやすくなります。
- 紹介者がいる場合には、わざわざ自分で調べに行かなくても聞いてみましょう。
- 「知らない」は論外です。そのような人と取引をすることのリスクを考えてみてください。
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