建物表題登記と完了検査と施工不良

登記
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既存不適格建物

建物表題登記の申請と建築工事の仕上げが同時進行になることがあります。本来ならば、建物が竣工し、完了検査の合格後に検査済証の発行を待ってから建物表題登記を申請するものです。

実務では、完了検査前に建物完成と認定できる段階で建物表題登記の申請を先行することがあります。なぜ、完了検査が終わるまで表題登記を待つことができないのでしょうか?

建築工事は工程管理をしっかりしていてもやむを得ない突発的な出来事で工期が遅れることがあります。それでも、工事完了引き渡し日を優先するためには、土日夜間を問わず突貫工事で間に合わせようとする事になります。

このことが、建物の施工不良や手抜き工事の原因になっていないか心配です。レオパレスの施工不良や先日の毎日新聞の朝刊に載った則武地所施工の八王子のアパートの階段崩落事故と無関係である事を願っています。

当初の図面のままでは階段が想定以上の急角度になることが判明し、急きょらせん状にする図面に差し替えられて工事が進んだ。〜略〜 検査機関は提出された書類などを基に完了検査を行なったが、当初の図面とは異なる階段の施工を指摘することはなかった。

上記記事より抜粋

建物表題登記を先行する理由

主な原因は大きく二つに分かれると思います。

金融機関の融資実行を優先するから

現場の進捗状況を確認することなく机上でお金の流れを決めてしまうことがあります。今月中に融資を実行したい。その1週間前には金銭消費貸借契約を締結しましょう。

仮に、30日に融資を実行する為には、23日に金銭消費貸借契約を行う事になります。この予定で段取りしてくださいとなったとします。

金融機関の稟議も決裁されて日程が確定します。そして私達土地家屋調査士へ連絡があり、工事の進捗状況が確認されます。

「このような日程で融資実行するらしいので現場確認に行きたいのですが、大丈夫ですか?」と現場監督に連絡。。。

ここで、現場が遅れていることが発覚!

もう日程変更はできないから、徹夜してでも間に合わせてくれ!となる。

金融機関も融資を実行すには、担保が必要です。そのための抵当権の登記。この登記をする為には、建物の登記があることが大前提。建物が完成しているから登記を申請することができます。

建物が未完成のままでは登記申請することができません。建物の登記ができてないから金融機関は担保設定の登記ができない。だからお金を貸すことができません。となる。

融資実行の予定日までに建物の表題登記が完了していること。これが最優先事項になります。

建物の賃貸借契約で引渡し日が決められているから

オフィスビルや賃貸マンションなどの事業用建物の新築。よくある不動産投資のひとつ。プロジェクトに関わる全員にとって大きなお金が関係しています。事業主は建物を貸すことでテナントからの賃料収入を得ることが事業の目的です。

入念に考えられた事業計画、建物が完成すると同時にテナントに使ってもらい賃料収入を得ようとする計画は当然です。そのため、建物の建築中にテナントの募集をして建物賃貸借契約を締結します。

契約書に記載された建物利用開始日に建物が完成していなかったら?

違約!ペナルティ発生。高額な違約金が発生します。

賃貸に限ったことではありません。売買でも同じことが起こります。

分譲マンションの完成が遅れて、当初契約通りに引っ越しができなくて住まいがなくなってしまった買主に事業主がホテルを用意して完成までの費用負担をしたという話を聞かれたことがある方もいられると思います。

但しこのような費用を負担できるのは大手企業だけであり、個人や中小零細企業ができることではありません。違約で倒産!ということも現実的な話です。

大手ゼネコンだから大丈夫。という問題ではなく、今のコロナ禍では海外で生産している製品の納期が遅れて届かないことが原因で建物の完成が遅れているという話も聞くようになりました。

工期遅れの対応策

現場確認を徹底する

机上で金融機関を優先することは大事なことだが、銀行主体の日程調整をするのではなく、日程の調整をするときには必ず現場の進捗状況を確認して現実的な行程を把握する。

現場の工程会議にプロジェクトの担当者や設計事務所、あるいはコンサルタントを同席させて、常に全体の工程を把握した上で次の行動に移るようにする。また、工事会社が事実を報告しやすい環境作りも大事な要因です。現場の声が現場監督で止まってしまい事業主やコンサル、プロジェクトの責任者へ伝わっていないことも多い。

融資実行引き渡し日は、現場の状況を確認、協議してから確定するようにすれば、大きなトラブルは防ぐことができると思います。

賃貸借契約に特約を付す

あらゆる問題を事前に想定し、契約書にすることがベスト。その上で、工期が遅れた場合の対処方法も契約書に書いておくようにする。

工事完了の時期は1週間や10日前にならないとわからないというものではないので、工程管理と現場管理をしっかりと行なっていれば直前になって騒動になることは防ぐことができると思います。

理想的な建築工事と建物表題登記申請

  1. 契約工期の完了2ヶ月くらい前に現場監督を交えて工事完了までの行程確認をする
  2. 完了1ヶ月くらい前には完了検査の予約をして、検査日を確定する
  3. 土地家屋調査士に建物表題登記申請を依頼する
  4. 金融機関と司法書士へ建物完了検査予定日と建物表題登記完了予定日を伝える
  5. 建物完了検査を受け、検査済証を受け取る
  6. 土地家屋調査士が建物表題登記を申請する
  7. 融資を受ける場合、金銭消費貸借契約を締結する
  8. 約1週間で建物表題登記が完了する
  9. 融資の実行と同時に司法書士が所有権保存登記と抵当権設定登記(融資を利用する場合)の申請をして施主(事業主)に建物の引渡しをする
  10. 賃貸借契約通りテナント(建物の借主)へ明け渡す(利用開始)

本来、建物表題登記の申請は検査済証の交付後に行うものである

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