境界確定をしてから建物を新築すると防げるリスク

境界確定・測量
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建物の新築を計画しているときは楽しくて、同時に少し怖い気持ちが湧いてくるものです。結婚して子供が生まれ、親も高齢になってきたために同居を考え二世帯住宅への建替え、後継者問題による事業の転換で遊休地となりそうな土地の有効活用のための建物の建築、あるいは、相続対策のマンション建築など。新たに土地を購入することなく再建築することがよくあります。

土地の境界確定は完了していますか?

境界確定を先延ばしにしたために、隣人とトラブルになり精神的にも金銭的にも問題となり解決が困難な事態に陥ってしまっている方から相談を受けることがあります。全ての人が好意的に境界確定に協力してくれるのでしたら何の心配もないのですが、残念なことに他人との接触を極端に嫌っている人や何かと謂れのないクレームをつけてきて問題となっている人もいらっしゃいます。そのような方が隣接土地にお住まいだった場合、『運が悪かったね』で済ませることができますか?

ゼネコン・ハウスメーカー・工務店の営業

彼ら建設会社は、建築工事を受注して建物を建てることが仕事です。建物を建築してお客様にその建物を引き渡して代金を受け取ります。建物を建てるお客様がいないと会社は倒産します。土地の境界が未確定なことのリスクも承知のうえで、建築のプレゼンをしています。

もし見込み客が、「境界確定をしてから建物を建築したい」といってこられて、隣地に少し常識の異なる方が関係していることを営業マンが知っていたとしたら、その営業マンはどのような対応をされるのでしょうか?

土地の境界が確定していなくても建物の建築をすることはできます

不動産登記法のもと法務局で記録管理されている土地の境界(筆界)が現地と一致(境界が確定)していなくても、建築基準法のもと建物を建築することはできます。多くの建築の営業マンはこのことを知っているため、土地の境界確定をすることなく建物の建築を勧めてきます。土地の境界確定が不調に終わって、建築工事までなくなることを避けるために、あえて境界確定測量をしないで建物を建築するように勧めてくると思います。それが建築の営業マンで、工事を受注しなければ会社が存続できないからです。

境界確定測量が面倒だという事実

境界を確定する作業は簡単なことではありません。役所や法務局の資料調査から始まり、該当地と隣接土地、場合によってはその土地が在る街区全体を調査・測量して、調査結果を精査し、関係土地所有者と現地にて立会確認をして全員の同意が必要になるからです。

納得しない人や反対者がいる場合には、境界確定は不調となり境界未確定土地となります。法務局に境界を決めてもらう筆界特定制度や、裁判で境界を確定する境界確定訴訟といった制度もありますが、境界確定測量とは別に、さらに時間と費用が掛かることになります。

建築の営業マンがこのようなリスクまでお客様に説明しているとは考えられません。

隣地所有者を配慮した仕上げの外構工事

仕上げの外構工事で工事完了です。敷地に沿ってフェンスや塀を設置することが多い工事です。では、どこに設置するのか?隣人は、その設置された線が敷地境界だと思い込んでしまう方がほとんどです。

近隣住民から、「うるさい!」、「休日に工事をするな!」、「朝早すぎる。夜は工事するな!」、「危ない!」などと注意を受け、迷惑をかけ我慢してもらってきたという負い目のある工事会社が土地の敷地境界線だと思われるところにフェンスや塀を設置することは困難なことです。

土地境界を確認していないのだから、隣地所有者の主張する場所よりに設置することが多くなってしまいます。このようにしてできた境界線が、土地の境界(筆界)線と一致していることは珍しく、大概、隣地が広くなるように設置されています。酷いときには、隣地の越境物を避けるために故意に当該地の内側に設置されている場合もあります。このようなときでさえ、隣地所有者に状況説明をしないで設置していることが多いと聞きます。

後日、境界確定測量を実施すると、隣地の面積が増えて、本地の面積が少なくなっている大きな要因のひとつです。

土地面積の確保

過去に境界確定測量が行われた土地で、法務局に地積測量図が備えてある場合には、その地積測量図を復元するということで、本来の土地の境界線を復元することもできるかもしれませんが、測量した形跡もなく地積測量図もない古くに分筆されたままの土地の場合、本来の境界(筆界)を復元することが極めて困難になります。

筆界特定や境界確定訴訟をするにも本来の境界を証明するに足る資料が必要になります。現地は所有者が依頼した工事会社が隣地との境と思われる場所に設置したフェンスや塀があり、有力な資料もない状況で、「本来の境界線は、もっと隣地側だ」と主張して、どれほどの信憑性があるでしょうか?

地方の過疎地で、数センチ・数㎡の差であれば我慢することもできるかもしれませんが、都心部の地価の高い場所で、数センチ・数㎡も違っていたら納得できない事態になってしまってもおかしくありません。後になって、犯人探しや悔しい思いをしないように、境界確定が出来ていない土地に建物を新築するときには、事前に境界確定測量を行うことをご検討ください。

杭を残して悔いを残さず

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