相続の延滞税が発生しないように事前に準備できること

境界確定・測量

相続の申告が終わり、相続税の納付額を現金で用意できなかったため、延納の手続きをする方や金融機関からつなぎの融資を受けてとりあえず税金を納めてしまい、延滞税や借入金利を支払いながら相続した不動産のご売却活動をされる方も多いと思います。

この延滞税やつなぎ融資の金利負担を発生しないようにすることはできませんか?

相続の申告期限は、10ヶ月あります。なぜ10カ月もあって、不動産ひとつのご売却が出来ないのでしょう!その原因について考察してみたいと思います。

不動産が売れない理由

不動産自体に問題がある

特殊な薬品を使用していた工場やクリーニング店、ガソリンスタンドなど土壌汚染の可能性があり、行政が定めた調査を行い、安全であるということを証明しなくてはならない。検査結果によって汚染されているとなれば、土壌汚染を解消しなくてはならず、その費用は、数百万から数千万、そこし大きな工場になると億単位の費用が掛かります。

そして、地中埋設物がある土地は、そのガラの撤去を売主負担で行うことが一般的であるため、ガラが埋まっていることが多いとされる場所の不動産は、納得できる金額で売買契約が締結できたとしても、地中埋設物であるガラなどが見つかった場合、その撤去費用が売却価格よりも高額になってしまうこともあり、無理に売却をするよりも駐車場や資材置き場として利用するなど、別の方法を考えなくてはならない土地も存在します。

また、昔は田んぼや沼だった場所では、開発行為によって宅地として造成工事されたとしても、地盤が悪く大掛かりな地盤改良や数十メートルに及ぶ杭を設置しないと家1軒すら建てられない区画も存在します。

コロナ禍の影響で、自殺などの告知事項も増えています。賃貸借の救済については法律が変わりましたが、売却の場合にはまだ告知が義務となったままです。

上記のような土地・不動産を売却してしまうと、問題が発覚した時に売却価格よりも高額で、払いきれない損害賠償金を請求されることになることもありますので、注意が必要です。

不動産の在る近隣に問題がある

最たる問題は、殺人事件です。隣地で殺人事件があった。ご近所で殺人事件があった。こんな事実があると、相場でご売却することはほぼ不可能だと言えるでしょう。

殺人事件とまではいかなくても、隣がごみ屋敷だったり、ご近所にクレーマー的な異常者がいる場合も同様に相場価格でのご売却は難しくなることでしょう。

そして、同じ町内会に反社会的勢力の事務所や、問題のある宗教法人がある場合にも通常のご売却は難しいとご理解ください。

境界明示が出来ない

一部の公売や競売を除いて、売買取引時に境界標の確認をすることが義務化されつつあります。境界が不明であるということは、購入者にとって自分の所有する土地の大きさ、位置が分からないということです。場所が分からない以上、購入した土地を自由に活用することもできません。

これが境界トラブルの始まりになります。隣地と境界確認が出来ないということは、隣地所有者と何かしらの問題があるということが容易に想像できます。トラブルを承知で不動産を購入する業者はたくさんあります。しかしながら、購入価格は、相場価格とは大きくかけ離れたタダ同然の価格になります。

税金を払うために売りたくもない不動産を売却しなくてはならなくなった不動産の所有者が、バナナのたたき売りのような価格で、大切な不動産をご売却されるでしょうか?もし売却したとして、その価格で税金を支払うことはできるのでしょうか?

相続前に境界確定測量を行ったほうが良い理由

故意・過失、偶然、原因は分からなくても境界標が動いてしまったり、亡失してしまうことはあります。境界確定測量は、元の正しい位置に移設したり、再度、境界標を埋設して復元する作業を行います。復元作業時に土地所有者と隣地土地所有者とで、現地に復元された境界を立会確認して確定することになります。

この立会確認ですが、日常的に挨拶し交流のある人同士が立会確認をした場合、ほぼ100%の確率で双方ご納得されて、境界確認書にご署名ご捺印をしていただけます。これは、日頃の良好なお付き合いの賜物です。

ところが、相続が発生してしまうと、同居しているご子息がいられる場合を除くと、結婚や仕事の関係でその家を離れてしまった相続人は、被相続人の両親ほどご近隣との人間関係が良好とはいえなくなります。生前のご両親であれば、お互いさまということで、何の問題もなくすぐにいただけた境界確認書も、相続人に対しては隣地のご所有者も少し慎重になります。

さらには、遠方にお住いの相続人に至っては、相続人自らが現地に来られて、ご挨拶の後、境界確認をされるのではなく、私達、土地家屋調査士に境界確定測量を依頼し、委任状で私達を代理人として境界の立会確認までご依頼される方が増えてきました。

大抵、ご実家の在る場所は、ご近隣の方も被相続人の方と同年代の方が多く、ご高齢者へ境界のご説明をすることが多くなります。そして、ご高齢者ほど物事に対してとても慎重で、ご挨拶に伺っても1回目でご対応してくださる方が少なく、ご連絡先の電話番号すら教えてもらえないことが多々あります。

また、折角お電話番号を伺うことが出来ても、電話に出てもらえないことが多いものです。その理由は、私が携帯電話からご連絡することが原因だそうです。090で始まる携帯電話は、誰が掛けてきているのかわからず、詐欺に遭いたくないため慎重になっているとのことでした。固定電話でも同様で、FAXか、手紙でのご連絡を希望される方も多いです。

これは1例にしかすぎませんが、ご相続前であれば、すぐにできたことも、一旦相続が発生してしまうと作業効率が極端に悪くなり、手間も時間も大幅に増えてしまうようになります。その分、費用に反映されることになりますので、戻る予定の無いご実家がありましたら、ご両親がご健在のうちに境界確定測量を済ませておくことをご検討ください。

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