【再建築不可】心配事はこの確認から

境界確定・測量

未舗装の空地を通って入る道路から少し奥にある住宅。このような不動産の所有者の一番の心配事は「建て替え」

自分が住んで元気に生活しているときには気にならなかったことが、『相続』を考えたときに大きな心配事になりました。路地状敷地はトラブルが多いって聞くし、いつまでもこのままってわけにもいかないだろうし、建て替えるにしても工事が大変そう…そもそも建て替えできるのかしら?

こんな不安をお持ちの方は大勢いらっしゃいます。ですが、みんなが不動産屋さんではありません。不安を解消したいけれど、何をどう調べればいいのか分からない!誰に相談したらいいかも分からない!安易に不動産会社へ相談して、その後しつこく営業に来られるのも嫌だ!という方に向けて、現状確認の仕方を説明します。まずはご自身で調べて、現状を理解してみましょう。その先に解決したい問題があるようでしたら、不動産業者や工務店、設計士、土地家屋調査士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

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路地状(旗ざお)敷地の実態

道路から奥まったところに在る建物が全部、路地状敷地の建物というわけではありません。

  1. 道路までの通路部分(空地)の土地を単独で所有している路地状敷地。
  2. 道路までの通路部分(空地)が他人の所有地で所有している土地建物は道路に接道していない囲繞地(イニョウチ)。
  3. 道路までの通路部分(空地)が建築基準法の第42条第2項の道路として指定されている。
  4. 道路までの通路部分(空地)が建築基準法の第43条但し書き道路の許可が得られる空地。

多くは上記4つのどれかに当てはまると思います。

1.路地状敷地

黄色く囲まれた旗状の土地を所有していて、道路に接している路地状部分のAの幅が2m以上ありましたら心配不要です。そのままで建て替えすることが出来ます。

2.囲繞地

道路に接していない袋地です。このままでは、生活が出来ないので、囲繞地通行権という権利を盾に他人の土地を使用させてもらいながら生活しています。道路に接していない敷地なので、建て替えることはできません。建て替えるためには、2m以上の幅で道路に接するように囲繞地の一部を買うか借りるかする必要があります。

3.42条2項道路

敷地が接している土地は建築基準法の道路に指定されているので、この土地も建て替えすることが出来ます。ただし、建築基準法では、建物を建築するときには、幅員4m以上の道路に2m以上接していること。とありますので、現状の前面道路の中心線から2m下がったところまでのセットバック部分は、道路としてみなされますので、セットバック部分を除いた有効宅地の部分が建築敷地になります。

4.43条但し書き

こちらは、前記の2項道路とは異なり4m以上の空地に接していたとしても、建築基準法の道路としては指定されていません。そのため建て替えの予定があるときには、その都度、許可を得る必要があるものです。既存の建物があるから建て替えも簡単にできるだろうと考えることは危険です。たとえ自分の土地の前が4m以上の空地になっていたとしても、そこに至るまでの途中に塀や車庫などが作られて狭くなっている箇所があったりすると許可が下りない可能性が高くなります。

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2項道路と但し書き(43条2項2号:2018年に改正)道路

建築基準法第42条、第43条

(道路の定義)第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。

(敷地等と道路との関係)第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。

 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

建築基準法 e-Gov法令検索より引用

簡単に言うと、建築基準法が施行される前からあった幅員1.8~4m未満の道路が2項道路。道路ではないが建築基準法の道路と同等以上の公開空地が確保され建築審査会等の許可を得て建築することを許可された通路が第43条2項2号(以前の43条但し書き)。

現状確認の方法

現地

  • 公図や地積測量図と全く異なることがあります。公図では道路のような空地があるとも思えないようなところでも、そこで生活をされている方々が協力し合って道路上の空地を確保しているところもあります。逆に地積測量図では3m幅の路地状部分がありその奥に有効宅地の部分が広がっている土地なのに、隣地の方が花壇にしてしまって実際には2mにも満たない通路のようになってしまっていたりすることもあります。
  • 酷いところでは、地主が開発した分譲地の中で開発道路の終端に接している家を買われた方が、道路を駐車場として占有してしまっていることもあります。
  • 法務局や役所に保管されている図面と現地が異なる場合には、何かしらの問題が起きている可能性が高くトラブルの原因になります。
  • 現地を確認することで、トラブルになりそうな問題を発見することが出来ます。

役所

  • 建築課:「道路の建築基準法の扱いを調べに来ました」というと、丁寧に教えてもらえます。上の4パターンのどれかの可能性が高いので、家を建てる時にどうなるかも教わってきてください。上記4つのどのケースになるかを確認します。
  • 道路課:市区町村や都道府県が管理している道路は道路台帳という図面が整備されていることが多いので、前面の土地が官所有の公衆用道路か、私道かを調べることが出来ます。官有地でしたら比較的安心して建て替え等の相談も進められます。逆に私道の場合、役所に資料が全くないことが多く調べることがたくさん出てきます。私道か公道かを確認します。
  • 上下水道の埋設状況:官の所有する公道か、民間の私道かによるところが多いのですが、上下水道の埋設管にも公設管と私設管があります。私設管は勝手に使用することはできません。そして私道の中にある埋設管も勝手に使うことが出来ません。私道の掘削許可が必要になります。私設管か公設管の別、そして引込経路を確認します。

法務局

  • 公図:現地と土地の境界が明らかに違っていないかを確認する。万が一、心当たりのない土地がある時は、第三者の権利が存在する可能性が高い。また、路地状部分や道路部分の土地が建物の敷地と切り離されて別の区画になっていることが確認できる。
  • 登記簿謄本:自分の敷地と接道している道路部分の土地の所有者を確認する。道路部分の所有者が市区町村や都道府県など官有地であればセットバックの協議などガイドラインがあるので進めやすい。しかしながら、民間人が所有している私道のときには、前面の私道の一部でも所有していることが重要になります。共有持分があることで、建て替えや売却する場合の通行・掘削などの承諾が得られやすくなります。
  • 地積測量図:境界確認するときにあると便利です。過去に立会確認している境界は復元することが出来るので境界トラブルになりにくいです。

問題解決は専門家へ相談

ここまでご自身で調査することが出来たら、問題解決のために何をしたらよいかも想像できると思います。専門家に相談するとお金は掛かりますが時間を無駄にすることなく問題解決に向かって進めることが出来ます。

時間が掛かっても費用を抑えて解決したいと思う方は、ご自身で挑戦なさってみてもよろしいかと思います。

さいごに、不動産の物件概要書に『再建築不可』と書かれている物件資料をご覧になったことがある方も多いかと思います。この原因は、1の路地状部分の道路に接している幅が2m未満、2のように道路に全く接道していない、あるいは、4の公開空地が何か物や工作物などで確保できなくなっている場合がほとんどです。これらの問題は、熟練した専門家でも解決することが難しい問題です。

ご自身が当事者でしたら、専門家と相談しながら、時間をかけて少しずつ解決していく覚悟をして事に当たるようにしてください。購入検討をしていた物件にこの問題があるときには、それなりに安く購入することが出来るかもしれませんが、ご売却のときには同じように安く売るしかないことも覚悟してください。

不動産取引に慣れている不動産投資家さんは別として、これから不動産投資をはじめる方は再建築不可の物件を購入することは避けた方がよろしいかと思います。

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