相続対策~土地の合筆・分筆登記~

登記
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相続のときに困らないように土地を分けやすくしておく

「現況の土地建物と不動産登記上の公図が全く異なっているものを整理したい」こんな相談を受けることがよくあります。これでは分かり辛いと思いますので別の言い方をしてみます。

「アパートと借家を所有しているので、二人の息子に1棟ずつ相続させたい。

 ただ土地が10筆(①~⑩)あって、きれいに分けられないんです」

 下図のような状態(整理前①図)を整理後(③図)のようにしたい。 

現在の状態(整理前)①図

 一定の条件はありますが、土地を一旦まとめて(合筆②図) 、分ける(分筆③図)。境界線を消して新しい境界線を書き直すイメージです。

合筆してから分筆する

 10筆ある土地を1筆にして、2筆に分ける作業をします。諸条件の説明は省略しますが、順番は以下のとおりです。

  1. 合筆登記
  2. 土地境界確定測量
  3. 地籍更正登記(登記記録と実際の測量の面積の差異がある場合)
  4. 分筆登記

これで完了です。この一連の手続きで一番の問題が2の土地境界確定測量です。対象地のすべての境界について隣接土地所有者の同意と確認を取得しなければなりません。境界に対して異議のある隣接所有者がいる状態で、正しい土地の境界と面積は○○です。という登記申請は認められません。3の地籍更正登記ができないと、次の4の分筆登記にすすめません。 

合筆後 ②図(10筆全てを一つに合筆して1筆にしたことで、2棟の建物の敷地が広い一つの土地になった)

道路境界確定には行政が介在

このケースに必要な隣接所有者は、1-1,1-2,2,3-1と道路の所有者です。

道路との境界線を確定するためには、反対側の土地所有者の同意が必要になる場合が多いです。道路は、道路幅員が認定されていることが多く、片側だけで決めてしまうと道路の反対側の土地有者に不利になることがあるからです。

この場合の道路境界を確定するために立ち会う必要があるのは、5-1,6,20-1,20-2,20-3の所有者です。(※道路幅員は決められているためにその幅員確保をどこにするかが重要になる) 

直接立会確認する民民立会に比べ、道路境界確定は、書類申請などの手続きで立会確認までに時間はかかっても、官である行政が介在するために不調に終わることが少なくなります。

 境界確定測量が無事に完了し、一筆にまとまった土地の面積が合筆前の10筆の土地の登記記録の地積の合計面積と許容量を超える差異があるときは、地積更正登記をして登記記録と実際の面積を一致させます。そしてその後、建物ごとの敷地に合わせて土地を分ける分筆登記を申請します。 

分筆後③図 2つの土地に分けられた整理後

行政が柔軟に対応してくれた例

1.道路の境界線を確定するときに必要な反対側の対象土地を減らしてもらう

道路の反対側の所有者の一人が亡くなっていて相続登記が未了の案件がありました。戸籍調査から相続関係が明確になり現地にお住いの老人のほかに二人の相続人の存在が判明しました。

現地にお住いの方の話によると、相続発生から10年以上経過しているが相続の時にまとまらず疎遠になって5年以上経過している。話をぶり返しても紛争になって裁判に発展しかねないからお互いに触れないまま今に至っているとのこと。もうかなりの年齢なので死ぬまで放置しようということで納得している。寝た子を起こす騒ぎはおこしたくないので、他の相続人に連絡しないでほしいとの希望でした。

役所にそのままお伝えして協議した結果、その土地については立ち会いを省略して境界確定の範囲を変更することで道路境界確定を完了してもらいました。

③図で例えると、20-1,20-2,20-3の確認が必要なところを、20-3を除外して20-1,20-2の反対側を確認して境界確定した事例です。

 2.土地所有者の不要な土地を寄付して境界確定した

道路内に私人が所有する土地がありました。所有者を追跡調査したところ、兄弟姉妹の共有地だと判明。すでにかなり前から公衆用道路として利用されていて非課税の土地になっていました。よって、土地所有者へ納税通知が送付されることもなく、所有者は持っていることさえ知らなかったそうです。

兄弟姉妹誰一人必要としていないため、その道路の管理者である市へ寄付してもらい、所有権移転後に市と境界確認をして道路の境界確定を完了しました。

相続前に土地の整理をするには

  1. 何筆にも分かれて土地一筆ごとの境界が分からなくなっている土地をまとめる合筆登記を申請する。
  2. 一筆あるいは数筆にまとまった土地の境界確定測量を行う。
  3. 土地の地積に差異があるときには地籍更正登記を申請する。
  4. 好きなように土地を分けるために分筆登記を申請する。以上 

これで、万が一不幸が起きた時にも揉めることなく相続ができる準備ができました。

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