不動産が売れない!

売買

父が一人で住んでた住宅。子供たちは皆結婚してそれぞれの住宅で生活をしている。亡くなる前は子供達のうち特定の一人(Aさん)が父の世話をしていました。その事情を知っているほかの相続人は全員、Aさんが単独で相続することを了承していました。

Aさんも新しく離れた場所で生活を始めているため、父の残した住宅を売却することにしました。他の相続人も誰一人反対する者もなく、Aさんの自由にすることを承諾していました。

Aさんは不動産業者に売却を依頼して、幸いにもすぐに買主が現れ、売買契約を締結しようということになりました。あまりにも早く買主さんが見つかったこともあり、不動産の調査が後回しになっていました。

登記名義人

いざ契約に向けて調査を進めていると、対象不動産の所有権登記名義人は、Aさんの祖父母のままであることが判明。売却するためには、Aさんを登記名義人にすることが必要です。祖父母の相続登記とAさんのお父さんの相続登記をする必要があります。

幸いにも祖父母の相続登記は、子供が父一人だけであり何ら問題なく行うことが出来ます。また、被相続人のAさんのお父様の相続人は、Aさんを含め全員がAさん一人に相続することに同意されています。あとは、遺産分割協議書を作成してAさん名義への登記をするだけになりました。

売買契約と相続登記

買主の意思も変わらず、相続登記が終了出来次第、不動産の売買契約締結と話は進みました。司法書士も速やかに遺産分割協議書を作成してくれて、意思確認と登記申請をするだけというところまで来ました。

買主も早く契約をしたいと言っていたのですが、Aさんの行動が遅くなりました。原因はAさんのみぞ知る状態です。忙しくなったのか、もっと高く売りたくなったのか、Aさんが単独で相続する内容の遺産分割協議書の作成が終わったあと、司法書士が行う他の相続人の意思確認の調整をしないまま数カ月が経ちました。

Aさんにお金が必要な事態が起こり、急に動き出されたのです。買主も多少気分を害されてはいましたが購入する意思は変わらず、相続登記が完了したら契約してくれるとのことです。

意思確認が出来ずに塩漬け物件に

司法書士が相続人に以前作成した遺産分割協議書の通り気持ちの変化がないことの意思確認を、Aさんに調整してもらい行っていると、一人だけ確認できません、ということです。Aさんが放置していたときに体調を崩されてしまったそうです。

現在も集中治療室に入院中ということで、意思確認どころかご面会も許されない状態とのことです。ましてや、書類にサインなどできるはずもなく、相続も頓挫して、不動産の売買は白紙の状態になってしまいました。

時間の経過とともにAさんの懐事情が厳しくなることは、容易に想像できます。しかしながら「代筆・代弁してもいいか?」「何かいい方法はないのか?」など、無茶な質問をされても、「ダメです」「ありません」以外に返答のしようもなく、時間だけが経過しています。いまAさんがどのようになさっているのかは分かりません。

案内人が変われば結果も変わる

不動産の売却相談から一気に相続登記まで完了していたら、状況は全く違っていたことでしょう。「たら、れば」で後悔しても過去に戻ることはできません。今できることの最善を尽くしてきたことの積み重ねで「いま」がよい結果になってきたのです。

ひとつひとつを中途半端にしないで、ひとつひとつを速やかに完結させることに集中して行動するようにしてください。

社会は、難しい法律で縛られています。その中を少しでも進みやすくする案内人が各士業の役割です。自分勝手に予定を変更することなく、疑問が湧いたらすぐに相談・確認して、速やかに目標に到達するように行動し続けてください。

迷子になった相談者が無事に迷路から脱出して、良い結果に到着することを願っています。

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