誰かが言ってた。あらゆる出来事はただの事実。それ自体に意味はない。捉え方ひとつで嬉しいことにも悲しいことにもなる。
いまを生きるなら楽しく幸せな方がいい。
家をとられる不安から解放された
3回目の公売。ついに落札された。
- この家に居られなくなった
- どのように追い出されるの
- 怖い人が来る
- 何処に住むことになるの
- いつ、、、
役所からの連絡は機械のようだ。感情はない。金額は分かる。どこの誰が購入したかは分からない。
不動産業者はどうやって事業にするのか?この後どんなことが起きるのか?一般的なことをお答えした。不安と恐怖で気が狂いそうだと嘆かれていた。
電話があった。お礼の電話だった。感謝してもしきれないという。
「住み続けられることになりました!」
落札者は不動産業者ではなく、近所の経営者。従業員の寮として使用するらしい。社員ではないが、家の一部に住み続けられることになった。家賃は掛かるが、新しい同居生活が始まると思うと、にぎやかになり楽しみにしているそうだ。
税金の督促と膨らみ続ける借金、住む家を取り上げられる不安から解放された。なんであんなに苦しい思いをしながら古くなった家に執着していたのかわからなくなった。土地建物は自分のものではなくなったが、同時に維持する費用と苦労もなくなった。
事実は取り上げられたということだが、結果的には手放すことにより、気持ちも穏やかに同じ家で生活できることになりました。
電話越しの声は、元気で明るい大きな声でした。
私道なんていらない
前面の道路は私道。その道路の所有者は、N氏と開発会社の2者。この道路を利用している家は全部で4軒。開発会社は所有権を残したまま所在不明になった。N氏以外の利用者3軒は、持分もなく無料で私道を利用している。何かあったら自分の責任になるかもしれないと思うと、無料で利用している3軒に腹が立つと言っていた。
この私道については、持分の無い3軒と弁護士を通じてトラブルになり嫌な思いをしてきたそうだ。こんな思いをするなら持分なんかいらないから、所有権を手放したいと思っていたそうだ。別件の測量をしているときに相談された。
不思議なもので、言葉にされた事件は関係者にもエネルギーで伝わるのかもしれない。私道の持分の無い3軒のうちのひとり、S氏からも相談があった。持分のない私道を使っているが、このまま売却することが可能なのか?相場より安くなることはないのか?、と。
S氏の土地建物は道路に接しているとはいえ、その道路が私道である限り、持分がないのだから様々な制約を受けることになり、相場価格での売却はできないであろう。さらには、過去に争った相手から持分を譲ってもらうことはできないと思い込んでいる。弁護士に依頼すればどうにかなると思っていた過去過去の考えはもうない。
『弁護士に何を依頼したのだろう?』
ほかの2軒の状態はもっと複雑だ。
弁護士なんて必要ない
N氏は持分があり再建築もできるから持っていることのメリットの方が多いですよ。と、お伝えしたらご安心されました。でも、維持管理のことを思うと、所在不明の会社とN氏の2者だけで所有することに煩わしい気持ちがあるらしい。持分の一部を手放すことに異存はないとのことだ。
S氏は将来のことを見据えて私道の持分が欲しい気持ちが強い。そして、他の2者も同様に私道の問題を解決したいと思っている。
話を聴く限り、既に問題は解決していると思った。4者ともに変なプライドがあるのだろう。どう考えたら、弁護士に依頼する結論になるのか不思議でしかない。いい大人が4人も揃って何をしているのだろう?
「4人で直接ご相談されたらどうですか? 弁護士さんを中に入れる必要なんてないですよ!」
「冷静にお話合いが出来るようになりましたら、ご連絡ください。私でよろしければ実務はお手伝いさせていただきます。」とお伝えしてあります。
きっと、お電話があると思ってます。感情論での話し合いは纏まりません。過去の感情的な過ちは水に流して穏便に話し合うだけで、ここの私道の問題は解決するでしょう。
泣き寝入りが最良の選択
もう10年ほど昔のことだ。所謂特殊詐欺の被害に遭った。被害額は数千万以上になった。それまでに貯めたお金のすべてを失った。
なぜすべてを失うまで、送金を止めることが出来なかったのだろうか
人は一人では強くない。一度目の送金は、金銭欲から行うことが出来た。その後、すぐに後悔することになる。
自分も悪事に加担してしまった。
この気持ちが湧いたらもう取り返しがつかなくなる。自分も犯罪者の一人だ!ばれたらどうしよう。詐欺師はこの恐怖心を巧みに煽ってくる。まともな社会生活が送れなくなる。社会的信用を失う。
お金がある限り何度でも送金してしまう。誰にも知られたくない!
銀行からは何のための送金ですか?としつこく聞かれる。説明できない。銀行を変える。送金方法を変える。すべて失った。
でも、連絡が来る。
金を送れ!
誰にも相談が出来ない。お金を無心するようになる。それでばれた。信用を失う寸前だった。
警察へ出頭した
自分が犯罪者だと思い込んでいたから、、、
愚か者。ただの被害者。警察で諭された。何もできない(しない)から被害届を出す必要もないと言われた。腹が立った。気が狂いそうだった。電話番号と、住所・氏名そして口座番号までわかってると思った。海外だが回収に行こうと思った。まだ電話は掛かってくる。ますます腹が立った!
警察は何もしてくれない!そして、行かない方が良いという。行ったら帰ってこれないだろうという。だったらどうにかしろ!ってますます腹が立った。でも、なんとなく言わんとすることの想像はできた。
結局行かなかった。泣き寝入りした。
いまでも数年に1度の連絡はある。そのたびに全てが思い出されて苦しくなる。
いまは、行かなくて、追いかけなくてよかったと思う。平和に元気に仕事を続けられている。高い授業料だった。
コメント