賃貸住宅を解約してから3年後に覚えのない精算金の請求書が送られてきた

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不動産の賃貸借契約のトラブルの多くは、解約後の清算金に関するものです。特に原状回復という名目の費用負担の解釈の相違が原因となっているものがほとんどです。これは今に始まったものではなく昔からあるもので、国も放置することなく国土交通省が窓口となり、ガイドラインを作ってトラブル防止に努めています。残念ながら現実にはトラブルはなくならず、何度も改訂されてきています。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」についてをご参照ください

原状回復

原状回復とは

原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。

⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化

国土交通省ホームページから引用

経年劣化によるものは、賃料に含まれるものと考え、賃貸人(貸主)の負担となります。賃借人(借主)が負担しなければならないものは、賃借人の故意過失などによるものと、線引きがなされています。

敷金・礼金、ゼロ・ゼロが招く問題

不動産投資がブームになり賃貸物件が増加していることやテレワークなどの働き方の変化、そして日本の人口減少などが重なり、需要と供給のバランスが崩れ、空室が増えてきました。賃貸不動産投資は家賃収入を得ることが目的です。空室のままでは税金や維持管理費用がそのまま負担になり、収入ではなく支出となり金銭が出ていくだけの状態になります。

不動産投資家、大家さんにとっては空き室の状態が続くよりは、一日でも早く賃借人を見つけて家賃収入がある方がいいわけです。そこで他との差別化、競争力を増すために、敷金・礼金を無しにすることを始めました。さらには、入居初めの1~3か月を家賃無料にするフリーレントというサービスまで出てきています。

本来、改正民法における敷金の取り扱いは、建物賃貸借契約が終了し、建物の明渡しを受けたときに、未払い賃料、原状回復費用その他の借主の債務を控除した残額を返還するもので、賃貸人と賃借人の立場を同等にするためのものです。

敷金・礼金なし、フリーレントあり。なんていう圧倒的に借主が有利な条件はありませんでした。敷金2か月、礼金2か月は一般的な条件でした。

ここまで金銭的に不公平に思える条件を探してくる賃借人の中には、収入が少なく安定していない、所謂、属性の良くない方が一定数存在します。また、そのような方は家賃保証会社の審査に通らないことが多いです。

空室のままでいるよりは、属性の良くない人でも貸した方がいい。と契約してしまうと、家賃滞納や解約時の借主の負担分の回収が困難になるなどのリスクを背負い込むようなものです。

目先のお金に惑わされることなく、入居者の基準を明確に作っておくようにしましょう。

管理会社を選ぶ

タイトルの3年後に送られてきた請求書の話です。送り主は当時の貸主ではありませんでした。入居していた物件の管理会社からです。それも全国展開している大手ハウスメーカーの不動産管理部門。おそらく知らない人はいないと思います。請求書の名目は、原状回復費用。金額は家賃の2か月分と同じ程度。

相談者の話によると、その物件の賃貸借契約の条件で、敷金2か月分を預けてあったとのことです。そして、解約当時、原状回復とは別に不用品の処分をお願いしたそうです。その際、不用品の処分費用は敷金とは別にお支払いしてあり、原状回復の費用負担精算の見積り待ちの状態だったそうです。そしていまに至っているとのことなのですが、確認したいことが2点ありました。

  • なぜ、原状回復と敷金の精算を終わらせなかったのか?
  • なぜ、3年も経ってから精算書ではなく請求書が送られてきたのか?

当時の書類は残ってなく、相談者の記憶だけを信用することもできません。弁護士でもなく、相談者の代理人でもない部外者の私が管理会社に問い合わせることもできなかったので、不動産会社のことだからと思い、宅建指導班に相談してみることにしました。

※相談者の話が全て事実だとしたら、家賃2か月分の敷金を預けたままで返還されていないのだから、不当に金銭の請求をされている可能性がある。

宅建業の行政指導ができない

都道府県にある宅建業課へ連絡したら、その不動産会社は大臣免許業者だから国土交通省の宅建業の中央整備局に相談するように案内されました。

管理業は、宅建業ではないので宅建業者に対して行政指導をすることが出来ない!

と言われ、消費者センターか法テラスへ相談してみてくださいとのことでした。

不法行為に当たるかもしれませんが、実害がなく警察へ相談しても無駄。消費者センターでは何もできません。法テラスでは、法律相談だからなのか、裁判の話になります。今回の内容は金額が大きくないので相手(大手不動産会社)の管理会社もお金のかかる裁判まではしてこないだろうとのご意見でした。

現時点では、こちらから事を起こすこともないので、つぎの相手の出方を見てから対策を考える方がよろしいでしょうとのアドバイスでした。

特殊詐欺

賃貸住宅の解約時にきちんと精算を完了しなかった貸主・借主・管理会社の誰か一者の責任という問題ではありませんが、個人情報の取り扱いも厳しくなった状況下において、不動産の取引は、貸主と借主は素人で、管理会社は専門家です。大手不動産会社の看板に恥じないようにプロとしての職責を果たしてほしいと思います。

また、特殊詐欺の可能性も考えられる事案です。そうなると不動産会社もある意味被害者と考えることもできますが、業務を完了しないで中途半端にした責任は大きいと思います。

不動産に関係するトラブルは、実際に被害に遭ってしまうと、その損害は大きなものばかりです。『管理業は宅建業だから行政指導はできません。』で済ませるのではなく、素人である相談者に代わって確認の電話をするくらいのことはしてほしいものです。

相談相手がいなくお困りのときは、すぐに反応して被害に遭わないように、一旦落ち着いて冷静になってから、法テラスサポートダイヤル:0570-078374へ相談することをお勧めします。

法テラスのホームページはこちら⇒https://www.houterasu.or.jp/

特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む。)のことです。

警視庁ホームページから引用

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